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『空を取り戻した日』
The Child Who Wanted To Sleep
ミシェル・ブリューレ/野沢佳織 訳
舞台はブラジルのリオデジャネイロ。
貧民街ファヴェーラからも零れ落ちるように、しめ出された十二歳のニノ。
残酷な現実は、何度も彼の希望を打ち砕く。
浮浪児として生きる彼にとって、居場所といえるのは「夢の中」だけだった。
とはいえ、お腹が空き過ぎると眠れない、物乞いをしては寝るだけ、そんな毎日。
リオの街は、彼をまるでいないかのように無視するのだけど。
そんな中でも、わずかな経験や人との交流から、彼は成長していく。
そして夢の中でもまた、彼はいろいろなことを学んでいく。
希望とは、学ぼうとする姿勢から生まれるんじゃないだろうか。
それには、謙虚な姿勢であることが肝要であると思う。
だからたとえ裕福な者でも、謙虚さを失い、学ぶことを手放してしまったら、その人生は空虚なものになるに違いない。
理不尽で不公平な世界を呪い、盗んだり騙したりすることを正当化する、そんな生き方を否定することはできない。
けれどそれは、理不尽で不公平なことに加担し、助長させることでしかないのかもしれない。
そのループから、まずは自分が抜け出さなければいけない。
それは豊かな者でも貧しい者でも、同じことなのだと思う。
十四歳になったニノに射す光は、決して「奇跡」ではない。
「奇跡」はいつだって、世界中にあふれている。
2015.10.15
せれんでぃっぽ☆とむやん